Ｋｕｒｉ３’ｓ乱読月報
 1999,3,8　更新

ども。ぼぉっとしているうちに、３月に入ってしまった。
庭ではチューリップが芽を出し、馬酔木が開花、近所の山にある梅園では、梅祭りが開催中。
春だ春だ。

スタープレックス　ロバート・Ｊ・ソウヤー／内田昌之訳　ハヤカワ文庫ＳＦ
ソウヤーだから、問答無用で購入。スタートレックを思わせる異種族混合の乗組員で構成された宇宙探査船「スタープレックス号」の（船長の？）活躍。
様々なアイディアや乗組員の異種族ゆえの葛藤、なんて細かい事は置いておいて面白いＳＦを読んだ気持ちに浸れるのがソウヤーの良いところ。
ソウヤーの作品がどんどん売れてどんどん翻訳される事を望むものである。
というわけで、皆さん買ってくださああい。

プラネットハザード　惑星探査員帰還せず　ジェイムズ・アラン・ガードナー／関口幸男訳　ハヤカワ文庫ＳＦ
処女長編、本邦初紹介の上下巻。帯には、ソウヤーの賛辞が・・・とくれば、読まずにいられないでしょう。（Ｋｕｒｉ３だけか？）この作家は、ソウヤーと同じカナダ在住とのことだ。カナダのＳＦ事情に付いては、山岸さんによる本書の解説に詳しい。
帰還率ゼロの惑星に派遣された「消耗品扱いの要員」と呼ばれる未踏惑星探査員フェスティナは、果たして無事生還できるのか？　という「謎と波乱横溢するアドヴェンチャーＳＦ」。
短い章立てがテンポ良く読み易い。同じ世界設定の第二長編も翻訳刊行予定とのことなので、待たれる事である。
それにしても、カナダの作家の間では、未来の人間はガラスの身体という発想が流行っているのか？（それとも、ソウヤーもガードナーも「銀河鉄道９９９」のファン？　・・・ありうるなぁ）

造物主の選択　Ｊ・Ｐ・ホーガン／小隅　黎訳　創元ＳＦ文庫
いうまでもない「造物主の掟」の続編。
土星の衛星タイタンで発見された機械生命たちを巡って、今回は、その機械生命の創造主と人類、そして機械生命自身の三つ巴のあれやこれやが展開される。
創造主は１００万年も前から恒星間航行の出来る文明を持っていた異星人、タイタンの機械生命はといえば、地球の中世ヨーロッパ世界を思わせる暮らしを営んでいる意識を持ったロボット、これに関わる地球人は、前作でも大活躍のインチキ心霊術師ザンベンドルフとそのスタッフたちに、地球の企業体やら科学者やら・・・と、たいへん賑やか。前作で残されていた大きな謎が、異星人の世界を描き出すことで納得のいくかたちで解き明かされていく。
傑作ハードＳＦ。

怒る大誘拐　青山智樹　朝日ソノラマ文庫
昨年出た「笑うＵＦＯ殺人？事件」の続編。
主人公レイカも、マッドサイエンティスト青木も、金の亡者梶原も、みんな元気だ。今回は、前作で登場した宇宙人の故郷から地球との交換留学生がやってきて、お約束のドタバタ劇が繰り広げられる。
こういうのは、頭休めに最高だけれど、書くのは大変なんだろうなぁ。青山さん？

赤き馬の使者　探偵物語U　小鷹信光　幻冬舎文庫
１９８０年の単行本の文庫化。前作の探偵物語も、表紙は松田・工藤のイラストであったがこれも同じ。表紙で「あの番組の原作！」と思ってしまうと、躓くかもしれない。あくまで、「原案者の小説」だ。
およそ２０年前の作品なのに古さを感じさせない、傷だらけ（重傷である！！）になりながらも、事件を追ううちに自らの過去の秘密まで明らかになっていく。ハードボイルドの王道を行く作品。
読むべし。

李歐　高村　薫　講談社文庫
「わが手に拳銃を」を下敷きにした書き下し。とのこと。
下敷きのほうを未読なので比べる事が出来ないが、中国マフィアの殺し屋と一介の大学生との男の友情（愛情、か？）を描いた壮大なお話。
殺し屋のほうから描くのではなく、彼に出会った事で人生を狂わされた大学生側から描いてあるので物語に入って行きやすい。さすが高村さん、なわけです。

クーデター　楡　周平　宝島社文庫
‘９８年１２月に文庫化された、「Ｃの福音」に続く楡周平の第二作。
オウム事件を彷彿とさせる宗教教団が起こしたクーデターを、報道写真家である主人公・川瀬雅彦が暴いていく、というか、ほとんど一人で闘ってしまう。ぐいぐい読まされる、「エンターティンメントってこうじゃなくちゃ」という作品。
前作と単行本で出ている「猛禽の宴」「クラッシュ」とあわせて６部構成の作品の一部だというから、今後も楽しみが続いて嬉しい。

どうもどうも、今回のアップデートはだいぶ遅れてしまった。待っていたヒトがいるとも思えないのだが、もしいたら、ごめんなさい。
「造物主の選択」を今回リストに加えたかったので、これを読み終えるまでアップできなかったわけですね。いやぁ、長時間楽しんじゃった。面白い（興味深い）んだけれど、簡単に読み流せないので集中力の落ちている時には読めないのね。ホーガンって。

では、また来月。

top 前回を読む 次回を読む

PARADOX? 出版物 逆説通信 乱読月報 なんでしょね 遊友リンク Kuri3's Bookmark 広場の伝言板
Kleefeld Home　 PARADOX Home　 Einhorn Home